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3月上旬、演奏会へ向けての取り組みの一つとして、カール・ジェンキンス作曲『平和への道程』をどんな思いで歌いたいか、 取り組んでいきたいかというテーマで語り合う時間を持ちました。団員の思いのいくつかをご紹介します。
●いろいろな題材を盛り込んでいながら、親しめる曲になっているところが素晴らしいと思う。

●作曲の背景にあるコソボ紛争などを歌う私たちが知っておくのはもちろん大切だが、多くのお客様は、 その場の音楽と訳詞字幕で印象づけられることになるから、合唱としてのクオリティをあげることも忘れないようにしたい。

●ヨーロッパでは違う宗教の子供たちが同じ学校に通い、他の宗教も「そういうものだ」、と差別せずに受け入れていた。 私たちも先入観を持たずに他者を受け入れる寛容さを持ちたい。

●人類の歴史は戦争の歴史でもある。人間は懲りない。「寛容」であることの大切さを思う。

●今生きている私たちが、“平和がいい”と願う気持ちを表現したい。
また、もう一曲のレナード・バーンスタイン作曲『チチェスター詩篇』には旧約聖書の『詩篇』から引用したテキストが用いられています。 馴染みのないヘブライ語という言語に苦戦している私たちですが、締めくくりの美しい旋律は“兄弟たちが一つになって平和に暮らすことはなんと素晴らしいことか”と歌っています。 この2曲を並べてみると、時代も違い、宗教や言葉、文化が異なる人たちが全く同じ願いを抱いていることに気づきます。

少し遡りますが、グリーン・エコーは今回の演奏会の指揮者、川瀬賢太郎先生のもとで、今年2月末、名古屋フィルハーモニー交響楽団第443回定期演奏会に出演し、 プロコフィエフ『アレクサンドル・ネフスキー』を歌いました。 オーケストラと合唱の大音響で描かれる13世紀ロシアの戦闘風景の迫力を表現することに必死だった私たちに、川瀬先生は、 戦地の緊張感の中にある一兵士の心情を全身で表現することを熱心にご指導くださいました。 一歩踏み出す先は、生か、死か…そんな張りつめた空気をどれだけ自分の中に描けるかを問われました。
その本番の後、先生ご自身は実は第6曲の独唱に最も思い入れがあったとお聞きしました。 そこではメゾ・ソプラノが、大切な人を失い大地を血に濡らす悲しみを切々と歌います。 「『やっぱり平和な世の中がいいということがテーマとして残るといいな』と考えながら指揮をしていた」というお話が非常に印象的でした。

そして5月、『平和への道程』を初めてご指導いただきました。 曲に対する私たちのイメージは大きく膨らみ、この曲がより明瞭に見えてきました。 『アレクサンドル・ネフスキー』の時におっしゃった「戦いの最前線にいる兵士一人ひとりに名前があった」という言葉はここでも同じだと感じました。
悲しいことに今も昔も変わらないのは、ごく普通の人が、気づいたら争いに巻き込まれ、命を落とし、あるいは大切な人や穏やかな日常を失い、 深く傷つく構図。 そして戦いが終結した時、そこにあるのは明るい未来とは簡単には言えず、その傷を負って立ちあがっていかなければならない苦悩…。 終盤の長調の曲をどのような気持ちで歌うのか、もう一度深く考えたいと思いました。

ノーアイデアで歌わないように、と川瀬先生は繰り返しおっしゃいます。 一人ひとりが表現者たることが大切なのだと教えていただいたことを忘れずに練習に励み、2人の作曲家が込めた思いをお伝えできるような演奏をしたいと思っています。 皆様のご来場を心よりお待ちしております。

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